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1万字インタビュー 感情を煮詰めるような刹那ポップを解き放つ、1stフルアルバム『事実上』の完成

1万字インタビュー 感情を煮詰めるような刹那ポップを解き放つ、1stフルアルバム『事実上』の完成

Reolが1stフルアルバム『事実上』を完成させた。本作は、3月にリリースしたミニアルバム『虚構集』と対となるコンセプトであり、“人間のいいところやドロドロしたところを併せ持つ感情を煮詰めた作品”となった。 最新リード曲「激白」における感情を鷲掴みにする極上の刹那ポップ展開、「十中八九」や 「煩悩遊戯」が解き放つ時代とリンクする尖りまくったポップセンスの高さ、 「真空オールドローズ」や「ミラージュ」などで畳み掛けていく情景の浮かぶ作品力の高さによって解放されていく感情の高ぶり。 先行リリースしたNHK Eテレで放送された『メジャーセカンド』エンディング・テーマ「SAIREN」や、 専門学校HAL(東京・大阪・名古屋)2018年TVCMソング「サイサキ」という話題作も収録するなど、 目標をメインストリームとして“Reol”名義で再起動した彼女が誇る現時点での最高傑作の誕生だ。

テキスト:
ふくりゅう(音楽コンシェルジュ)

メジャーでやる意味と
ちゃんと向き合えた作品

ーー 想像を超えていく素晴らしいアルバムが完成しました。
Reol: 私もこれがチャート1位じゃなかったら、ちょっと音楽シーン信じられないなって感じですね(笑)。
ーー メジャー感を持ちながら、赤裸々に自分をさらけ出してるところもある、ポップさの際立った濃い内容となりました。
Reol: 今まで作ってきたアルバムで1番聴きやすいと思っています。私をはじめて知っていただくのに最適なアルバム作品ですね。いろんなルーツを通ってきているなかで、アウトプットが偏りすぎてないというか。いい意味でメジャーでやる意味とちゃんと向き合えた作品となりました。
ーー 動画共有サイトでの総再生回数が2億5千万再生を超える、ネットシーンで実績あるReolさんが、メジャーに挑戦する意味をどう考えていますか?
Reol: 私は出自がネット系なので、いわゆるサブカルチャーな存在と思われていると思うんです。でも、そんなシーンで活動していくなかでズレというか、自分の理想と求められてることのズレを感じていて。ふと『私は、サブカルチャーではないんじゃないかな』って思ったんです。自分がやりたいことはサブカルではなかった。メインストリームを意識して間口を広げるためのアルバムを作りたかった。今回、ソロ活動を始めるにあたりCONNECTONEレーベルとの出会いがあり、満足いく楽曲を生み出すことができました。
ーー アルバムへ収録した楽曲のバランス感もいいですよね。
Reol: 私の声の特性とアレンジャーにGiga(※3人組ユニット“REOL”にも参加)がいることを踏まえて、私たちの特色ってドギツイというか1曲のインパクトを強烈に残すタイプだと思うんです。それも踏まえて、今回はアルバムを通して聴いてみて“もう1回聴きたい”っていう腹八分目を意識しました。これまでの活動で実験してきた結果を反映した作品となりました。
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聴き手に対して気持ちを
訴えていくような作品作り

ーー 『事実上』という、アルバム・タイトルのインパクトも強いです。
Reol:
  • アルバムの構想を練るにあたって、3月に出したミニアルバム『虚構集』と対になる作品を作りたいと思いました。あの頃は、ユニット活動が終わってから、まだ自分の気持ちが切り替えられてなくて辛い思いをしていました。“続いていた方の未来”を想像してしまっていたんです……。“このソロ活動自体が嘘なんじゃないか?” そんな、違う世界線に移ってきたような感覚があって。でも、今回アルバムを作っていくなかで、やっとソロ活動としての自分を受け入れることができました。
ーー 精神的にもつらい中でミニアルバム『虚構集』と向き合っていたのですね。となると本作『事実上』は気持ち的にはだいぶ違う?
Reol: 超フラットですね。まっさらな状態というか、なにもない状態から作れました。
ーー 先行シングルとして「サイサキ」や「SAIREN」がありましたが、アルバムのイメージはどんなタイミングで確立されましたか?
Reol: 「サイサキ」や「SAIREN」をフル尺で作り始めたのが4月くらいで。まず『事実上』というタイトルを決めて、構想が段々固まってきて。ジャケットの色味も『虚構集』が青っぽかったので、『事実上』は真っ赤にしました。赤って、血の色でもあるので。血の通った生々しさ、人間のいいところもドロドロしたところも含めてます。感情を煮詰めるような作品を目指しました。先行配信した「サイサキ」と「SAIREN」を間に挟んだことで、自分が音楽で1番やりたいことは、聴き手に対して気持ちを訴えていくような作品作りだってことに気がつけたんです。気持ちですよね。それをフルでアルバムとして真っ直ぐに表現しました。
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“本当”を言葉にしたら
『事実上』になるなって

ーー リスナーにどんな思いを伝えたい、リスナーとどんなコミュニケーションを取りたいと思っていますか?
Reol: 誤解を恐れずに言えば「私のなにがわかるの?」と思っていて。曲を聴いて「好きです」「わかります」と言ってもらえるのは嬉しいんです。でも、「私とあなたは違うから本当の意味でわかるわけないじゃん」って思ってしまう自分がいて。ひねくれてますよね(苦笑)。ありがたいんですよ。でも、だからこそ絶対数を増やしたいというか。聴いてくれる人の数にこだわっているんです。分母を増やしたい。だから間口の広さを意識した作品作りをしたし。本当に届くべき人に届けるために、まずはたくさんの人に聴いてもらいたいと思っています。
ーー Reolさんのものづくりへの執念が、あらわれたエピソードかもしれませんね。今回『事実上』というタイトルもインパクトがありますが、なぜこのタイトルになったのでしょうか?
Reol: 『虚構集』のときに“虚”という言葉を使いました。それを受けて、“本当”を言葉にしたら『事実上』になるなって。語感もいいなと思ったのと、以前“れをる”名義で出した出したソロアルバムは『極彩色』だったので、漢字3文字縛りが自分のなかにあって、それで3文字の中で探した感じですね。
ーー 今回、アートワークも強烈ですよね? 神を感じるようなパワーがあって。Reolさんにとって神ってどんな存在だったりしますか?
Reol: アルバム作品を作るにあたって、というか『虚構集』のときからなんですけど、神様とかそういう存在にすごい興味があって。日本人だったら神道とか仏教の世界観なんだと思うんですけど。それってすごいふわっとしてるなと思って。たとえば「バチがあたるから、ご飯粒を残しちゃいけないよ」とか。でも、人ってみんな死に向かって生きている存在じゃないですか? だとしたら、生きている間に何ができるかってことを考えてしまって。生き物の持つ感情の生々しさとか、そんな要素を作品で体現したいと思ったんです。それを視覚化したらたどり着いたのが神様という存在でした。アートワークは、木村豊さん(※日本を代表するアート・ディレクター)にそんな想いを伝えていくなかで完成したもので。
ーー なるほどね。いまの日本って、台風や地震、津波、停電などの震災、政界やスポーツ界におけるエスタブリッシュの腐敗など問題が山積だと思うんです。大昔だったら、神頼みで大仏を立ててるような状況ですよね? Reolさんが『事実上』を作ることと向き合ったことは近いんじゃないかなって。
Reol: みんなが信じられるものって必要ですよね? たとえ幻想であっても“これさえあれば”っていう支えって。
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メジャーでCD出すことも
全部事後報告だったから

ーー アルバム『事実上』を聴いて思ったんですけど、Reolさんの幼少期の頃についてお伺いしたいなって。ご両親ってどんな方でしたか?
Reol: 父は温厚、ちょっと天然が入っている感じでした。「コンビニに行ってくるけど、なに欲しい?」って言われて「杏仁豆腐を買ってきてほしい!」みたいなことを言ったんですよ。そしたら、グミを買って帰ってきて(笑)。あと「歯医者へ行く!」って自転車に乗って出かけたのに歩いて帰って来たりとか(笑)。そういう抜けてるところがある人で、そんなお父さんが好きでしたね。母はわりときっちりしていて。「音楽やっていいよ!」って、最後まで言ってくれなかったのは母でした。すごく冷静に世の中を見るタイプの人で。
ーー 今は応援してくれている?
Reol: 応援というか、叱咤に近い感じ……。メジャーでCD出すことも全部事後報告だったから。「反対をしても、あんたはやっちゃうし。これで結果出さなかったら許さないよ!」みたいな。「自分がやりきったと思えるまでは帰ってくるな!」みたいな(苦笑)。でも、すごく応援してくれているなって思っています。 尻を叩くって愛がなきゃできない、実は多分一番のファンです。
ーー 子供のころに感じた気持ちなど、今回の作品への影響って大きいんじゃないですか?
Reol: あると思います。音楽を作るモチベーションとかも、すごい人格形成に関わってるかな。私、すごい「賢い!」って言われて育って。おじいちゃんやおばあちゃんにも。
ーー 勉強ができたんですか?
Reol: 勉強もですけど「賢いね!」っていわれると「賢くいなきゃいけないのかな?」って錯覚するじゃないですか? 賢いって言われているのにテストが80点以下で帰ったら、自分のキャラクターが崩れるって子供のころからなんとなく思っていて。それで勉強も頑張ったし、わりと子供が「わー!」って遊んでいるなかで大人に媚びを売るじゃないですけど。大人の仲間に入れて欲しがる子どもだったと思います。気が利く子供と思われたいというか。大人に対して何か働きかけるタイプでしたね、わりと。
ーー けっこう早い段階から自覚していたんですね。
Reol: そうですね。記憶があるくらいの年の頃からそういうことを考えてました。ちょっとズルい子どもだったと思います。
ーー 周りからのイメージに応えたり演じることって、ある種、いまの表現活動にも通じることもあるんじゃないですか?
Reol: そうかもしれない。やっぱり縛られちゃうところはあって。自分のキャラクターでこういう歌詞はどうなのかな、とか。言い回しや言葉遣いだったり。そこらへんは演出があるかもしれない……。こう思われたいから、こういう言い回しにしたい、みたいな。でも、敢えて裏をかくようなことはよくしますね。曲作りでも。
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Gigaにミキシングまで
音周り全般を一任した

ーー 表現活動におけるReolさんの深いところですね。今回、アルバムにおいて、Gigaさんによる編曲が軸となって構成されていて、様々なビートやリズム・アプローチがあったと思います。Gigaさんのサポートは大きかったですか?
Reol: 大きいですね。ざっくりニュアンスでしか伝えることができなくても、そこは5年間一緒に作っていることがあって、意図を拾ってくれるスピード感が早いんですよ。サウンドプロデュースがGigaじゃなかったら、フルアルバムをここまで早く出せてないと思います。
ーー 今年の春にミニアルバム『虚構集』を出して、秋にフルアルバム『事実上』ですもんね。けっこうなスピード感だと思います。Gigaさんと制作過程において、印象深いやりとりってありましたか?
Reol: 1曲目の「幽居のワルツ」は共編曲なんです。ある程度、自分の頭のなかで出来ていて。ほぼほぼ、あのまんま打ち込んだものを渡して。実際アレンジとして頼んでるから、変えてくるかなと思ったんですよ。でも、けっこう元のままでフレーズで使われていて。
ーー 3人組ユニット時代との変化ってことですね?
Reol: そう、昔だったらありえなかったなと思って。そもそも、こういう歌謡的な曲調は彼は通ってきてないんですよ。わたしはJ-POPを聴いてエモーショナルな部分に惹かれて育ったので。でも、Gigaが聴いてたのってKESHAとかUSのアーティストが多くて。作詞とか気にしはじめたのもユニットからだと思うんで。それまで意味とか考えたことがないような人だったんですよ。
ーー なるほどね、Gigaさんのエッジーさを考えるとわかるような気がします。
Reol: “れをる”時代に出したアルバム『極彩色』のとき、「mede:mede」という曲を作ったら、なかなか意図が伝わらなくて。「悲しい曲なんだよね」っていうのを説明するんだけど、わからないみたいな。「ここは歪んだ音にしてほしい」って言っても、「それは音としてキレイじゃないから、スッキリ聞かせたい」みたいな。そういうせめぎ合いがあったんです。でも、今回作っていて「幽居のワルツ」や「真空オールドローズ」とか、ノスタルジックな音作りにも対応してくれて、スムーズにいくようになったなっていうのが1番感じたことですね。
ーー 「真空オールドローズ」とか、アレンジなどスパニッシュな感じがノスタルジックでいいですよね。
Reol: ちょっとシャッフルの要素を入れて。けっこう面白い化学反応が起こってるんじゃないかなと思います。
ーー 今回、サウンドプロデュースでGigaさんを軸にしたのはどうして?
Reol: 新しいことは『虚構集』でトライさせてもらって。あれを受けた上で、より世界観を強固なものにしたいというか。今回はGigaにミキシングとか全部を任せたことで、音としての統一感を意識しました。フルアルバムなので。
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1曲目「幽居のワルツ」:
曲中で視点が変わっていく対話方式の楽曲

ーー アルバムの導入として、「幽居のワルツ」でのイントロの入り方が絶妙だなって。ワルツが不思議な雰囲気を醸し出しつつ、お伽話的な歌詞が没入感を高めてくれます。
Reol: 音として聞いたら、けっこうミュージカルっぽいじゃないですけど。曲中で視点が変わっていく対話方式の楽曲になっていて。お伽話っぽいなって思うかもしれないんですけどテーマは認知症なんです。そこを語ることってタブーなのかわからないですけど、けっこう思うことがあって。ただの記憶喪失の美しい話にはしたくなくって。それでできた曲なんです。
ーー そうなんですね。
Reol: 視点が変わるところで拍子を変えたりとか。音楽的に面白いことがやれてるんじゃないかなって思います。なので、これを1曲目にするかは迷いました。Gigaに「これを1曲目にしたら?」って言われて。「重くない?」と思って。でも、わたしがそういう曲って思ってるから、そう思っちゃう先入観があるかもなんですけど。「今回、ジャケットがあれなんだから、なんでもいいじゃん!」って背中を押されましたね。
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2曲目「サイサキ」:
自分のことを歌ってる楽曲

ーー 曲の雰囲気だけだったら、映画の導入部風であり、なんとなくティム・バートン監督の『シザーハンズ』が浮かびました。そして、アルバムの2曲目は「サイサキ」。決意表明を感じるナンバーですね。
Reol: 専門学校HALのタイアップがきっかけで作りはじめたんですけど、自分のことを歌ってる楽曲でもありつつ。そこのバランス感覚が上手くとれたと思っています。

3曲目「激白」:
恋愛をきっかけに作った曲をリードにするのは初めてかも

ーー 自分が思ってることが1番パワーになりますよね。3曲目が「激白」。90年代センスを感じる、突き抜けたアッパーチューンです。サウンド感は“いま”であり、新鮮な曲になってますよね。
Reol: わたしも今回、かなりお気に入りの曲でリードにしました。1番わかりやすいかなと思って。それこそHALのCMタイアップに向けて、サビだけいっぱい量産していた時期があったんです。そのときに作った1曲で。わりと仮歌詞から、歌詞も変えずで。フル尺で作ったら「いいじゃん!」みたいな感じでしたね。視野狭窄な関係の歌であり、恋愛や親子関係だとか、密な人間関係の歌。きっかけとしては自分の過去の恋愛に基づくストーリーなので、そういった曲をリードにするのは初めてかもしれないですね。

4曲目「十中八九」:
トライバルな世界へと
思って作った曲

ーー 4曲目が「十中八九」。Gigaさんが作曲を手がけ、サウンド感からアッパーで突き抜けてますよね。
Reol: ここからの流れで一気にジャケットの世界観じゃないですけど、トライバルな世界へと思って作った曲ですね。この曲は、作曲をGigaに振っていて、ラップ部分のリズムもわりと決めてきたんで、言葉をハメてやろうと思って仕上げました。自分でメロディーを作って歌詞をハメるよりも、作詞だけと向き合うとけっこう濃密に作れるんです。そこは飽きずに作業ができたというか。いくつかリファレンスを出して「こういう音作りはしたことないから作ってよ」みたいな感じで。リファレンス音源を超えてきてくれたので「ありがとうございます!」って(笑)。
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5曲目「煩悩遊戯」:
神様っぽい今回のテーマにも合うと思って

ーー 5曲目は「煩悩遊戯」。これは、フロウが気持ちいいですよね。
Reol: めちゃめちゃにラップしてやろうと思って作りました。ラップってお経とも親和性がすごく高いですよね? なので神様っぽい今回のテーマにも合うと思って。まず、ビートを仮組して。「幽居のワルツ」や「真空オールドローズ」もなんですけど、今回は自分で打ち込みしたデモをMIDIデータでGigaに渡すみたいなやり方が多かったですね。
ーー Reolさんがやりたいイメージが明確だったってことですかね?
Reol: そうですね。曲の構成とかも決めやすいんですね、その方が。

6曲目「-MANDARA FACT-」:
毎回、インスト曲でそのアルバムのテーマを形作っていた

ーー 6曲目はインスト「-MANDARA FACT-」。Gigaさんによる怪しげな曲ですが、ライブの雰囲気が見える感じですよね。どんなオーダーだったんですか?
Reol: 「-MANDARA FACT-」を作る前くらいにジャケの撮影が終わっていて。こういうイメージのアルバムになりそうっていう話をGigaとして。これまで毎回、インスト曲でそのアルバムのテーマを形作っていたんです。今回もそういうのをやりたいなって。3人組“REOL”時代の『Sigma Σ』だと、「-FINAL SIGMA-」みたいな。最初は1分くらいだったんですが、もっと尺を伸ばしてって伝えて。
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7曲目「真空オールドローズ」:
十代の頃の恋愛的なトラウマへの決別の歌

ーー 「真空オールドローズ」は、いつくらいのタイミングで?
Reol: これは早いですね。わりと編曲も私のなかで固まってて、最後のアウトロ付近で入ってくるアコギの不穏なフレーズみたいなのは、最初に私が打ち込んでいたやつで。最後にブラッシュアップしていくなかで、不協和音っぽいフレーズをツッコミたいってなって。6月7月くらいですかね。
ーー 具体的にイメージが見えてた?
Reol: 見えてましたね。これに限ってはというか。「幽居のワルツ」もですけど、自分で打ち込みしてGigaに渡して。ただ「真空オールドローズ」に関しては「幽居のワルツ」とは違って。けっこうざっくりアプローチをGigaが変えてきたんですよ。「編曲はまかせるから、最後にこのアコギのフレーズだけ使って」みたいな。

8曲目「ミラージュ」:
1番救いのない曲というか
逃避の曲

ーー 8曲目が「ミラージュ」。こちらは詞はReolさんで、Gigaさんが作曲という。
Reol: この曲は映画『アトランティス』とか『タイタニック』なイメージですね。海に関する映画をめちゃめちゃ観ていた時期で。映画を観た後、その時代背景や出てくるものに纏わることを調べるのが好きなんですが、タイタニック号の沈没地点と、アトランティス大陸があると言われている場所がほぼ同じ位置関係なんですよ。それに気付いて、タイタニック号に乗っていた人々が海に沈んでしまったあとも、アトランティスで生活していたらそれって素敵だなーと妄想しました。それがミラージュへのとっかかりのテーマです。楽曲内容については、わりと1番救いのない曲というか逃避の曲ですね。最後まで沈んでいくイメージというか。
ーー パワーある好きな曲です。今年の夏は、ずっと作品づくりだったのですか?
Reol: そうですね。生活も出来てないような(苦笑)。サウンドプロデューサーのGigaと瀬恒(啓)さんとしかしゃべらないから。どんどん語彙力が落ちていってみたいな(笑)。
ーー アルバムを作るっていう行為は、Reolさんの中でものすごい喜び?
Reol: 楽しいですね。その独りよがりな感じがすごい楽しい。ライブってやっぱりお見せするものだから。私のライブ・パフォーマンスの根底にあるのってたぶんショービズで。幼少期の頃から演じるみたいなことがけっこう確立されていて。でも、曲作りに関しては演じる必要もないし、人目を気にせずできるのが自由度高くて楽しいですね。
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9曲目「SAIREN」:
“ない才能を作れ”っていう奮い立たせソング

ーー 9曲目が「SAIREN」。エンディング・テーマに影響した、アニメ『メジャーセカンド』からの影響もありつつ?
Reol:
  • アニメ『メジャーセカンド』への書き下ろし曲として、NHKさんにお話をいただいて脚本を読んで作りました。主人公が天才型ではなく、身体能力に恵まれていたタイプではなかったんです。野球に向いてないんじゃないか、みたいなタイプで。私もたまに、自分のなかでミュージシャンであることに違和感を感じることはあって。作品と重ね合わせて、それでもやるって決めたらやらないとって。それで、“ない才能を作れ”っていう奮い立たせソングが生まれました。なので「サイサキ」よりはスパルタな曲かもしれません。

10曲目「秋映」:
現実とギャップのないことを歌ってる曲

ーー 強烈だけど「SAIREN」で救われる人もいますよね。10曲目「秋映」はバラードであり美しいナンバーとなりました。
Reol: バラードを1曲作りたいなって。でも、なかなか出来なかったんです、いいのが。どうしようかなって3拍子にしてみたら、わりとつるっとでたみたいな。
ーー 編曲が瀬恒さんで、ライブでもおなじみのバイオリンが軸となっていますよね。
Reol: 彼はギタリストでもありつつ、バイオリニストでもあるので。バイオリンのクラシック的な部分というか「型にハマってしまう部分を壊しちゃっていいよ!」って伝えて。「ちょっと不協和音が入ってもいいし、少し狂った感じに聴かせたい」ってオーダーをしました。
ーー 本編を終えるイメージが、「秋映」があることでしっくりときますね。
Reol: そうですね。1番、現実とギャップのないことを歌ってる曲というか。日常的というか。アルバム『事実上』において「幽居のワルツ」からはじまったストーリーが、「秋映」で終結していくイメージです。
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CD購入者限定ボーナストラック
「mede:mede -JJJ Remix-」

ーー アルバムであることの意味を感じる絶妙な流れですね。そして、11曲目にはCD購入者限定ボーナストラックとして「mede:mede -JJJ Remix-」を収録という。
Reol: 歌詞を見ればわかっちゃうところもあるんですけど。3年前、“れをる”時代のアルバム『極彩色』でオリジナル版を収録したとき、知り合いの音楽活動が終わったり、脱退があったり、解散とか。そんな影響を強く受けて作った曲なんです。それが、3人組ユニットの“REOL”として活動していた自分に降りかかるとは思ってなかったから。あらためて、実際に思うところがあって。それで作り直したいじゃないですけど、視点が変わった今だったら違うことを歌うだろうなって作った曲ですね。
ーー 以前作った楽曲でも、時を重ねることであらためて向き合えるようになりますね。
Reol: あんまり受けないと思って世に放った曲だったんです。でも、意外と「mede:mede」が好きですっていう人がけっこういて。ボーナストラックはファンサービスも考慮して選曲したので、今の自分、自己投影じゃないですけど。自分の思想を投影したバージョンですね。
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DL版購入者限定ボーナストラック「劣等上等」

ーー 鏡音リン・レン、ボーカロイド曲として先行リリースされていた「劣等上等」も、そんなポジショニング?
Reol:
  • そうですね。「劣等上等」もユニット解散後に作った曲だし。でも、結果“REOL”のメンバー3人が集まってるっていう部分が、作詞にも影響してるかもしれません。かつ、それをボーカロイドの鏡音リン・レン10周年に対して書き下ろすっていう部分でせめぎ合いもあって。ボカロに歌詞を書いていた頃は、ボカロに書いてる気持ちで書いていたんです。でも、今って自分としてオリジナルで曲を出してきた期間が長すぎて、あの頃と同じ気持ちでは書けないんですよ。どうしても、ちょっと代弁させるような形になっちゃうんです。そことのバランス感覚を上手く乗りこなせるように作りましたね。

離れた人が悔しくなるくらい良いアルバムだという自負があります。

ーー こうしてアルバム『事実上』、すべてお話を伺ってきました。制作を終えてみて、ご自身において成長を感じた部分ってありますか?
Reol: 意外と変わって無いなぁと思います。思うというか、5年前とかに作った曲を聴いても「わかる〜」って思うんですよ。なので、あまり変わってないんだろうなって。
ーー 自分のなかにあるものを整頓して構築していくのがアルバム作り?
Reol: 周りの環境はすごい変わったし、3年もあれば関わる人も変動があって。そういうなかで、いかに起死回生を図るかっていうか。今まで活動してきた中で巡り合った分、離れた人たちもいると思うんです。悔しいじゃないですか、実際。でも離れた人が悔しくなるくらい良いアルバムだという自負があります。ちょっと意地悪な言い方ですけどね。
ーー Reolさんの活動って、怒りのパワーってありますよね?
Reol: すごいあると思います。たまにちょっと病気なんじゃないかなと思うぐらい(苦笑)。どこに向けたらいいのかわからない怒りや劣等感がすごいあるかな。私、さそり座なんですけど。占いでさそり座の性格を見たら「1回されて嫌だったことは死ぬまで忘れない」ってあって。そうだなと思ってしまって(苦笑)。人と関わるなかで、誰であっても、リスナーであっても、友達であっても。軽はずみな言葉でもすごい覚えてるんですよ。それがずっと引っかかってしまうというか。自分のそういうところが怖いですね。そういう執着みたいなのが。
ーー でも、それが表現の原動力にもなってそうです。
Reol: 嫌なんですけどね、それって不健康だから。占いを見たときに「こわっ!」と思って。でも、嫌いなものとか、嫌なものがない人っていないと思うんです。そこをちゃんとさらけ出せる人の音楽にけっこう共感する部分があるんです。そんな面があったとしても、ちゃんと自分の楽曲に付随したところまで責任を持って舵をとってる人が好きで。自分もそうありたいと思いますね。
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とどまってくれた人たちを、私は後悔をさせたくない

ーー どう届くかまでが大事ですもんね。では、ファンの方へメッセージを。
Reol: そもそも聴き手の方を私は流動的なものだと思っていて。3年前聴いていた人が、今聴いてくれてることの方がまれだと思ってるんです。だからこそ、ありがたいことだと思うんですけど「サイサキ」だけ聴いたことあるって人もいっぱいいると思うし。あと「No title」だけ知ってるとか「宵々古今」だけ知ってるとかもね。
ーー そうですね。
Reol: やっぱりアルバムが世にでて、掘り下げて聴いてほしいんです。過去の作品にも繋がっていく部分もあると思うんで。気にいってくれたら、昔に書いた曲も聴いてほしいし。私のところでとどまってくれた人たちを、私は後悔をさせたくないというか。こんなにも音楽がありふれた世の中で、誰でも音楽をできる世の中で、わざわざ自分の活動を注視してくれてる人たちを大事に思いたいんです。ぜひライブも足を運んでいただけたら。自分にしかできないステージをお見せできると思います。よろしくお願いします。
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